Stay with me 前編【完】

Chapter4 /約束







古びたマンションの屋上。

そこにはボロボロの椅子に腰を掛け、夜空を見上げる小さな女の子と学生服を着た少年がいた。




「 …… ♫… 」


聞こえてくるメロディーは夜空に浮かぶ星の歌。少女が呟くように拙く、その歌を口ずさむ。


……… あれは、私?

これは、夢………?

そういえば、まだ物心がつく前、夜空を見上げ、童謡の星の歌をよく口ずさんで歌っていたんだっけ。

懐かしいな。

あの歌は、私に関心のない母が唯一私の為に歌ってくれた歌だった。

遠くに見える2人をぼやけた視界に映し、これは過去の記憶なんだと曖昧な思考の波に埋もれながら、漠然とそう感じた。



「お兄ちゃん────……約束だよ?」


幼き頃の私が隣に佇む少年に無邪気な笑顔を向けて何かを語りかけている。



……………誰?

分からない。名前すら知らないその少年の顔立ちは朧げで、もうほとんど覚えていない。

だけど、どうしてだろう。

その瞳だけは忘れられなかった。



他人とは違う灰色の瞳を持つ少年。

透き通るような澄んだ瞳は、夜空に浮かぶ星のように深みのある輝きを宿していて、誰よりも美しかった。

覚えていることなんてほとんどないけれど──…確かに彼は私の記憶の中に存在した。



「……どこ行くの?」


幼い私の問いに少年が答えをくれることはない。
何も映さない無機質な瞳をこちらに向けるだけ。

徐々に遠ざかっていく背中。




「……待って!!行かないでっ!!」


夢の中から消えていく少年。

その影を見送りながら、幼い私は必死に叫んだ。


君は、誰……?

待って!! 行かないであげて……


お願い……

どうか、あの子のそばにいてあげて。

夢の中の消えゆく2人を見つめながら、彼らを案じてそう願った。






0
  • しおりをはさむ
  • 3302
  • 1409
/ 551ページ
このページを編集する