Stay with me 前編【完】

Chapter5 /新しい関係






桜の葉園、園長室。

そこでは先月の経理報告に目を通していた園長が、窓の外から聞こえる賑やかな笑い声に事務処理中だった手元の作業を一旦止めた。

8月を迎え暑い日が続く中、園庭では子供達が他の職員と一緒に楽しそうに駆け回っている。


「……楽しそうね」


自然と零れたその言葉と共に表情も綻ぶ。

特に今日は、以前沙良ちゃんが買ってくれた水遊びのおもちゃを使って、花梨ちゃんや健君、裕太君以外の夏休みを迎えた小学生組もその輪に加わっていて、より一層楽しそうだった。

そんな微笑ましい夏の一コマを眺めていると……




「失礼しまーす」


園長室の扉をノックする音と聞き慣れた緩い掛け声が扉の向こうから聞こえた。

その声にいつもの爽やかな笑顔の彼を想像したが、現れた男の変わりように目を見開き一瞬怯む。


────が、すぐに笑みを浮かべて挨拶を返した。



「……あら慎也くん。いらっしゃい」

「先生。お久しぶりです」

「ふふ……慎也君。どうしたの? 今日は一段といい男ね?」


私の言葉に頬をかき、苦笑いを零す慎也君。

誰かに殴られたであろうその顔は瞼は腫れ上がり所々痛々しい様子だった。



「ハハ…。玲司にボコられました 」


まぁそうでしょう。慎也君を殴れる人間なんてそうそういないのだから、十中八九、玲司君の仕業で間違いないだろう。


「あらあら。珍しいわね……どうしたの?」

「……ちょっとやらかしまして」

「やらかした?何を?」

「いや〜。ちょっと、先生からの伝言を怠りました」

「……伝言?私からの?」

「沙良ちゃんの件で……」



あぁ。なるほどね……

慎也君の一言でなんとなく察しがついた。








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