Stay with me 前編【完】

Chapter6 /不安





桜の葉園、自室。


アルバイトが休みの今日。日中はいつものように花梨ちゃんや裕太君達と過ごし、夜を迎えた今は……夕食を摂り終えて自分の部屋で休憩をしていた。


窓を開けて空気の入れ替えをすると決して気持ちの良いとは言えない生暖かい夜風が入ってくる。

暦はまだ8月を過ぎたばかり。きっと、今夜もまた寝苦しい夜を迎えるのだろう。


「…はぁ…… 」


カーテンを閉め、ひと息つくと、折り畳み式の小さなテーブルに置かれた黒い携帯が目に留まった。それは以前玲司さんから貰ったもの。

今だに自分から使ったことのないそれ。やっぱり用もないのに気軽に玲司さんに連絡することは出来なくて。

玲司さんの仕事は特殊だから時間も不規則なはず。

今は仕事中かな?迷惑じゃないかな?
って、つい考えてしまうから、結局自分からは連絡が出来なかった。

画面にタッチするものの……




「……着信なしか」


ため息と同時に虚しい独り言が漏れる。

携帯初心者の私はメールを送ることはなく、玲司さんも勿論しない。それでも、今日みたいに会えなかった日に玲司さんは電話をしてくれて。

特に何を話すわけでもない短いやりとりだったけど、そんな他愛もない会話を私は楽しみにしていた。



玲司さんの声を聞くと安心する。

だから電話がないと寂しくて、こうやって会えない日の夜は何度も画面を確認してしまうんだ。


「 会いたいな…… 」


誰もいない部屋に私の小さな願いが寂しく響いた。









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