Stay with me 前編【完】

Chapter6 /心配



夕陽に照らされた築数十年のレンガ造りの区立図書館。その大きな窓枠にはオレンジの光が射し込み、いくつもの本棚が夕暮れ色に染められている。

午後の微睡みが過ぎた時間。

それは他の図書館と比べれば小さめなその静寂な空間の中で、まばらに存在する幾らかの人達が、本を手にして各々の読書の時間を楽しむ、そんな時間だった。





「沙良ちゃん?おーい。沙良ちゃん?」



ふと気づけば、向かい合わせに座る由香ちゃんが参考書とノートを目の前で広げて、こちらを心配そうに見つめている。

小さな図書館の小さな書紀台スペース。

アルバイトが休みの今日。由香ちゃんに誘われて、桜の葉園から徒歩10分程度のその小さな図書館に私は来ていた。



「あっごめん……」

「ううん。大丈夫だけど……沙良ちゃん今日はなんかぼうっとしてるね」

「ほんと?…ごめん。何でもないよ」



由香ちゃんの言葉に曖昧に笑って誤魔化す。

勉強を見てほしいと頼まれていたのに、私ってば……他のこと考えちゃうなんて何してんだろう。



「えっと、ごめん。質問は問9の英訳だっけ?」


気を取り直して、意識を英語の参考書に戻す。


「あっうん!ちょっと、ここの訳し方がよくわからなくて」

「そっか。えーっと、ここの訳はね……… 」



今の今まで思いを巡らせていた‘’ 他のこと ‘’に蓋をして、由香ちゃんの質問に耳を傾けた。







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