Stay with me 前編【完】

Chapter6 /現実



喧騒を響かせた繁華街から少し離れた通りの一角。喫茶店『sole』。街灯と月明かりに照らされた店先に仕事帰りの人達がちょうど中から出て来た。


「ありがとうございました!」


食事を終え、『sole』の外へ出ていく人達。見送った扉の先の彼らはみんな満足した表情を浮かべている。

食事を楽しんでくれて良かった。そう思いながら、そっと息を吐き、今日も忙しく明るい賑わいを見せた店内のテーブル席へと戻った。





………あの日。

哲郎さんが玲司さんと離れるように忠告された日。気まずい雰囲気に包まれた『sole』だったけど、客入り後からは明るい雰囲気を取り戻し、数日経った今ではすっかり通常通りの時間が流れている。



「沙良ちゃんお疲れさま。そろそろ上がっていいわよ」



その声に時間を確認すれば、時計の針はもう22時に近づこうとしていた。もうそんな時間か。


「……分かりました。じゃあこれ片付けたら先に上がらせてもらいますね」

「うん。ありがとう」


目の前の食器を片付けてテーブルを手早く拭き、トレーに乗せた食器をキッチンまで持っていくと、中では今日使った食材を片している哲郎さんがいた。


「佳代子さんに言われたので、先に上がらせて頂きますね。あと、この食器ここに浸けときますね」

「あぁ、サンキュー」


流しに食器を置いた私に気づいた哲郎さんはいつものようにニカッと豪快に笑う。その笑顔はいつも通りで、数日前の厳しい表情が幻のようだった。



「お疲れさま。気をつけて帰れよ」

「……はい。じゃあ、お先に失礼します」


数日前。玲司さんとは関わらない方がいいと言っていたけど、きっと哲郎さん達は今の私の気持ちを尊重してくれている。

その証拠にあれから……すぐに別れろとは言われなかったから。







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