Stay with me 前編【完】

Chapter1 /出逢い






蝉の音が響き渡り、空が夕闇に染まり始める頃。

桜の葉園の門から少し離れた場所には、黒塗りの高級車メルセデスベンツが停まっていた。

屈託なく笑う子供達が集まるこの場所とは無縁のはずのその車の助手席から降りた男は園長室に向かった。





────……
───…




「失礼しまーす」


ノックを合図に、1人の男が緩い掛け声と共に扉から姿を現す。

ダークスーツを綺麗に着こなした男はパーマがかったライトブラウンの髪を片方の耳にかけ、垂れ目がちな目を緩めて爽やかな笑みを浮かべる。

机上で書類整理をしていた園長はその男に気づくと、顔を上げ微笑んで迎えた。



「あら。慎也君?どうぞ」


園長は今までしていた事務仕事をいったん止めて、慎也にソファーに座るように促す。


「園の方はどうですか?経費は今月も足りてます?」

「えぇ。そちらは問題ないわ。いつもどうりよ」


桜の葉園は国や都の系列ではなく、園長が個人的に運営している。この男は、園長に資金や援助をしている組織の者だ。


「ただ…… 」

「どうしました?」

「17歳の子が園に入ることなったの」

「そうなんですか?」


子供を引き取ることは園では時々あることなのに、慣れているはずの園長の表情は暗い。

何か問題があるのだろうか。不思議に思っていると園長は話を続ける。


「元々はうちの園にいた子なの。5年前に養子の話が出て一度園を出たんだけど、上手くいかなくてね…」

「………」

「養子先に問題があって、彼らの人間性を見抜けなかった私の……判断ミスだわ」


それはいつもの凛として穏やかな笑顔でいる園長とは違う、後悔を感じさせる表情だった。








0
  • しおりをはさむ
  • 3255
  • 1401
/ 551ページ
このページを編集する