Stay with me 前編【完】

Chapter10 /それぞれの想い




残暑が続く東京の日差しも、新学期を目前に控えたこの時期は幾らか穏やかになる。

柔らかな日差しのおかげで、これまでよりも少しだけ過ごしやすくなった正午前。

昼食の前の外遊びの時間。園庭で駆け回る子供達を視界に映しながら、私は園長室の窓辺にいた。




「……ただいま戻りました」


昨日、『fiore』でお祝いをして貰った後………桜の葉園に今朝帰宅した私を涼子先生は優しく迎えてくれた。

ずっとマンション居てくれていいと玲司さんは言ってくれたけど、そういう訳にはいかなくて。それに、これ以上外泊することで花梨ちゃんや先生達に迷惑を掛けたくなくて。

それでも母が起こした騒動のことで、どんな顔をして謝ればいいか迷う私に、


「お帰りなさい。沙良ちゃん……」


先生は何もなかったような優しい笑顔で迎えてくれた。




「みんな元気ですね」

「ふふっ。そうね……」


今日も園長室の窓からは、園庭で元気に遊ぶ花梨ちゃん達の笑い声が聞こえる。

太陽に照らされたみんなの眩しい笑顔。

遠くに映るみんなの姿を先生と一緒に穏やかな気持ちで見守っていると先生はゆっくりと話し出した。


「怪我は…どう?もう大丈夫?」


きっと母に叩かれた頬のことだろう。やっぱり、先生にはだいぶ心配を掛けてしまったらしい。


「はい。もう大丈夫です。先生……色々心配をお掛けしてごめんなさい」

「ううん。いいのよ……」


謝る私に先生は首を振る。


「それよりも、貴女がまたこの園に戻って来てくれてよかったわ。ありがとう」

「先生…」



そう微笑んでくれる先生の笑顔はいつだって温かい。
割れた花瓶も汚れた絨毯も2日前の出来事が嘘のように元に戻っている。

母の起こした騒動のこと。由香ちゃんのこと……

このままこの場所に居てもいいのだろうかと迷う私の心に先生はここ居てもいいのだと示してくれた。









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