Stay with me 前編【完】

Chapter10 /届かない




新宿から渋谷。深夜の明治通りを走るメルセデスの車内はかつてないほどの緊張感に包まれていた。

殺気立った車内。

どんな状況でも笑みを絶やすことのない慎也さんでさえ沈黙を守り表情を消している。それだけで、今起きている事態の深刻さを物語っていた。

そして………

バックミラー越しに視線を投げた先。

交差した無機質な色を宿す仄暗い灰色の瞳。

普段から感情など表に出さない人だけど、玲司さんの今の表情はそれ以上に冷酷な色を浮かべている。情けなくも、一瞬その視線とかち合っただけで………冷や汗が背中を伝い身震いを起こしてしまった。




遡ること数分前。

組事務所に戻った俺達の元に一本の電話が入った。

緑川沙良。彼女が連れ去られたと……


沙良さんは知らないだろうが、彼女には適宜、監視と護衛が付いて回っている。

玲司さんと離れている間や施設の者と外出している時間………彼女の預かり知らぬ所でその行動は常に把握されていた。

多少やり過ぎな面も否めないが、彼女を想う玲司さんの心境と立場を考えれば、彼女の安全を第一優先とするのは仕方がないことだった。



けれど、最悪な事態は起きてしまった。

沙良さんの存在は隠されていて、敵対組織や組関係に関わることには常に細心の注意を払っている。

それに、沙良さんは夜中に施設を飛び出すことなど、今までに一度もなく、ましてや常に他者に気を遣っている彼女は夜中に街を彷徨うような性格ではない。

だから、油断してしまったのかもしれない。

まさか、‘’ 新山駿 ‘’のたかがガキ同士の揉め事に彼女が巻き込まれるとは予想もしていなかった。






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