Stay with me 後編

Chapter19 /母親






港区近藤組、総本部事務所。

目の前には元上司と現上司が無言で対峙し、今までにない重たい空気に胃が痛くなる。

豪華な応接室に置かれたソファーに、部屋の主以上に偉そうに腰を掛けた玲司。それだけでもハラハラするのに、こいつは俺の心情など全く気にならないらしい。


「何故、沙良に会った? 勝手な真似はやめろ」


喧嘩腰な物言いに、昭将さんの眉がピクリと揺れる。敬語!敬語が取れてるぞー!と叫びたかったが心の中だけに留めた。


「あの子のために忠告した。それだけだ…」


大きく息を吐いた昭将は玲司の態度を咎めることなく、それだけを告げる。

昨日、会長の側近であるこの人は会長の傍を離れ、単独で沙良ちゃんのバイト先である『sole』に出向き、彼女と接触した。

会長側の動きは把握してはいるつもりだったが、まさかこの人自ら単独で動くと思っていなく、昨日沙良ちゃんの護衛にあたっていた男も元上司には逆らえずに、対応が遅れてしまった。


目の前で睨み合う2人……いや、違う。

玲司と沙良ちゃんを慕う将生が真っ直ぐに自分の父親を睨みつけているから、3人だ。

一触即発の空気の中、胃の痛みに耐え、いざとなったら、止める役は俺だけか? と嘆いていると、玲司が立ち上がった。


「余計な気遣いも詮索も無用です」


敬語に戻った玲司に安心するも、よく見れば今まで怒りを露わにしていた玲司の瞳から感情が消えている。

マズイ……


「覚えといて下さい。次は……ありませんから」


この状態の玲司が一番まずいのだと知っている俺の心臓は急激にバクバクと動き出す。そして、それを知っている昭将さんもその瞳にあてられて、一瞬だけ言葉を呑んだ。


「……っ、芹澤…お前…」


昭将さんは何か言い掛けていたが、玲司は耳を傾けることなく部屋から出て行った。











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