藍の華【完】

10. 匡の過去と悲しみ





匡が囁いた、たった3文字の“藍華”という言葉にあたしは電撃が走ったような感覚を覚えた。



匡が言うあたしの名前は他の人が言うのとは全く違うものみたいで。



───もっと呼んでほしいって思った。



本当の家では全然呼ばれないあたしの名前を、この人は優しく呼んでくれる。


それだけでもいいって思ったの。


大切な人、たった一人だけでもいい。


その人が呼んでてくれてさえいれば、それでいい。



「………匡」



あたしは気がつくと、匡から目を離さずにまっすぐ見つめて彼の名前を呼んでいた。


それを聞いた匡は優しい瞳を向けてくる。


「………匡」


…特に理由もないけど匡の名前を呼びたくなったんだ。


そんなあたしに匡はフッと笑って、


「………なんだよ?」


何処か嬉しそうにあたしの頭を撫でた。


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