ホ テ ル【完】











彼──恒河さんは、私服を身にまとった私の姿を見て小さく舌打ちをした後に、何やら全てが認識の範囲内だと言わんばかりの意味深な笑みを向けてくる。




冗談じゃない。

ガキの戯れごとくらいにしか思ってないってのがよく伝わってきていい気がしないままに、空いていたスペースに腰掛けた。




「…本当は行きたくなかった。でも、あんな目立つ場所であんな高級車が停車されたら流石に我慢ならない」

「あー…、軽い強行手段に近い真似をしたことは申し訳ねえって思ってる。それに急な連絡も」

「…」

「それに、こっちとしてもよ?お前の辛ーい心情をお察ししたいところだったんだけど、」

「…」




「悪りいな」



渋みのある低いそれは、また半透明の煙を吐き出したあとに投げかけられる。



「逃げられると───ちぃ…と、困んだよ」









────それにあるのは思惑……そのただ一つだけだ。



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