ホ テ ル【完】

SS /スキになった日












「あ、グラウンド歩いてるの早川さんじゃね?」




小麦色に焼けた健康的な肌が太陽の光に照らされる。

五月下旬、天候が良好になりつつあるこの時期。学校中に植え付けられている桜の木々は、豊富な日差しのおかげでより深い緑に色づいた。

そんな昼下がり。パンが何個か転がっている机の上で頬杖をついていた俺は、ヤスこと田中康弘の一言で所在のなかった意識の全てを窓の外に向けた。





「んん〜〜〜今日も可愛い!」

「…」

「なんだろうな…あのガード固そうで無防備な感じ!」

「…」

「色素の薄い瞳に見つめられたいッ!」

「ヤス」





頬杖をつき視線はグラウンドへ向けたまま、冷然と口を開く俺を見てヤスは押し黙った。本当は誰にも見せたくない、だなんて…一度彼女を感じてしまったら際限なくどこまでも傲慢になるような気がした。

艶のある黒髪を揺らし、バインダー片手に花壇の脇を歩いている柑奈。花が似合う、と思った。





「それにしても、昴瑠の黒髪、まだ見慣れねえわ…」

「…」

「黒髪昴瑠もこれまたイイ男だって、学校中で話題だぞ〜?」

「…」

「廊下に溢れかえってる女子だって、み〜んなお前を一目見ようと思ってこのクラスにわざわざ来てる。憎い男だぜ、全く」

「…」

「あーハイハイ。どうせ昴瑠の気を引くのは早川さんだけですよぉ〜」

「…花、か」

「聞いてねえな?!!」






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