神楽さんと御堂研くん

第2章 /御堂研くん

午前の授業が終わると同時に教室が騒がしくなる。
昼休みに入る。
それぞれ好きな場所で食事をする。

「男子サッカーしよーぜ」
体育の授業でサッカーをしてから、このクラスでは妙に流行っている。
ご飯も食べず校庭で遊ぶらしい。

「直くんはー?」
数名集まった所で人数が足りずお声がかかる。
「俺はいい」
「毎回こねーじゃん!」
ケラケラと笑うクラスのスポーツ男子、佐野。
直くんは水泳だけじゃなく、運動全般が苦手らしい。

「けんちゃんはー?」
あ、俺にも声かけるんだ…。
今日は誰にも声かけられないかと思った。
「気が向いたら、直くん連れて行く」
そう言うと、直くんが首を横に振っていた。


「けんちゃん?」
ぼーっとしている俺に後ろの席から声をかける。
「ご飯食べねーの?」
「中学の時とは違うんだな」
そう言うと、まあ人が違うからな、とクラスを見渡しながら呟く。
「中学の時はねー、数日声かけてくる人居なかった」
少し明るく、笑って言う。
「井口も?」
直くんの言葉にふっと吹き出す。
「隼人以外」
それを聞くと直くんも笑う。
「そんな感じ!」


神楽さんの席には隼人が座っていた。
「神楽さんは?」
「さつきが食堂だからって」
「あー…そっか」
俺は思わず苦笑する。
隼人も白々しく、はあっとため息をついた。
「え、なに?」
直くんが不思議そうに首を傾げた。
「さつき、そういう噂ダメなんだよ。あいつ余裕で避けてきやがる」
直くんがへーと驚いたように声を出した。
「やーでも俺でも関わりたくないって」
「愛想いい分、世間体気にするタイプだからな、あいつ」
そこに近藤がいるかのように目を細めて睨む。
「あー、そんな感じ」
「や、それがふつうだって」

なんで俺がフォローしてんだろう。

隣の席から椅子を持ってくると隼人に肩を掴まれた。
「っ!?」
無理矢理右を向かせた。
「いや、普通に言って、痛いし」
別に渋らないから…。

「や、キスマークに見える?」
ピッと痣を指差す。
「はあ!?」
「ぶっ、…」
隼人のその言葉に直くんが飲んでいた野菜ジュースで吹きかけ、むせる。
「え?なに?」
思わず眉間にしわを寄せてしまう。
「はははは!!」
直くんは何故か爆笑する。
「なにそれ!?めっちゃおもろい!!あははは!」
直くんにここまで笑われると、さすがに傷つく。
隼人のせいだ。
「え。ほんとなに?俺のことどんな目で見てんの?なんだと思ってんの?」
「違うって!俺じゃねーよ、クラスの女子が言ってたんだよ」
「なにがどー見ても見えないでしょこれは」
「はははは!誰に付けられたの?」

直くんが面白がって俺の顔を覗き込む。

「あ!今のは直くんが悪い!!俺のせいじゃない!!」

隼人が直くんを指差す。
「いや、隼人が悪い」
俺は隼人だけを睨む。
「なんでだよ!!」
隼人は直くんを睨んでいた。
当の本人は涙を浮かべて笑っていた。

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