神楽さんと御堂研くん

第1章 /御堂研くん

高校に入ってから、こういう事がよくあった。
知らない女子によく話しかけられた。

話したことも認識もない子からけんちゃんと呼ばれる。

明らかに陵くん狙い。
従兄弟だからといって、俺と仲良くすれば陵くんとも仲良くなれるというわけじゃないのに。

イケメンで高身長だから、わかる。
モテると思う。
そして素っ気ない性格とか態度とかが堪んないんだろう。

嫌いだなー。

俺が隠れているところから、女の子が1人だけ見えた。
目が合うと、気まずそうにそらされた。

神楽さん、だったかな?
黒髪のロングで美人だって誰かが言ってた。
確かに美人だよね。


廊下で座り込んでいた俺は、出てきた女の子と鉢合わせした。
目が合うと、俺は少し笑ってみせた。
その子は、俺の悪口を聞かれたと顔から血の気がひくのがわかった。
「ごめんね」
俺がそういうと、目に涙を溜めて、出ていない声でごめんなさいと呟いた。
すごく怯えた目をしていた。
ええ、腑に落ちない。
俺の方が傷ついているのに。

みんなが帰ったあと俺は教室に入る。
机の上に置いたスクールバッグを肩に掛けた。

1人残っている彼女は何故か俺をじっと見ている。
さっきは向こうが気まずそうにそらしてくれたのに…。


「帰らないの?」
堪らず声をかけた。
「あ、提出物、終わってなくて」
見ていたのはあっちなのに、声をかけた途端にしどろもどろになる。
「そっか」
提出物なんてあったっけな。
「じゃあ、俺、帰ろうかな?」
彼女に向かって首を傾げてみせる。

あ、俺がこういう仕草するのがキモいのかな…。
てか、なんで帰るのに確認とってるんだろう。

「自分が酷いこと言われたのに、笑えるのすごいね」

ふと思考を巡らせていると予想外の言葉が飛んできた。
「え?」
「いつ見ても人に嫌な感じを与えない。すごいと思う」
彼女の視線と言葉に今度は俺がしどろもどろになる。
「私、感じ悪いらしいから」
困ったように笑った。
「へえ、誰が言うのそんなこと」
「え?あ、いや、誰って言うか…」
口ごもる。
「神楽さん、あんまし喋らないからじゃない?もっといろんな人と喋ろうよ」
その言葉にあからさまに怪訝そうに眉間にしわを寄せた。
そういう表情も出来るんだ…。
「帰る」
机に散らばった筆記用具を仕舞う。
シャーペンを持つ指先。
心なしか、手が少し震えてる。
「それは?」
机の上に広げたノートを指摘すると、小さく唸った。
可愛い。と思った。
「見てあげようか?」
「いい!」
「俺、勉強頑張ってる方よ?」
じっとり睨むように見られる。
なんでだろう…。
「御堂くんは、帰ったらいいよ」
御堂くん、ねえ…。
「御堂くんって呼ぶのやめて。この学校で御堂くんってのは陵くんのことだから。俺は研」
「御堂研くん」
なぜかフルネーム。
「はい」
「帰ります」
机の上の物を鞄に突っ込むと逃げるように教室を出ていった。

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