神楽さんと御堂研くん

第3章 /御堂研くん

本格的にテスト一週間前となった7月。
バイトを通常通り入れたくて、勉強する時間は休み時間へと当てた。
「けんちゃん勉強ガチ勢だねー」
俺の席の横を通る人に時々引き気味で声をかけられる。
「うーん」
笑って曖昧に誤魔化す。
声をかけられる度に顔を上げる。
集中が削がれるのだ。
なかなか進めたいところまで進まない。


偏差値そこそこの私立。
必死に、というわけではないにしろ、ちゃんと勉強しなければ赤点を取ってしまう。
高校に入ったからには、それなりにきちんとしたいと思う。
赤点だけは避けたい。


「直くん、昼、別にする」
昼休み早々後ろの席の直くんを振り返ってそう告げる。
「おー、すごいな、俺そんなに頑張れない…」
直くんも少し引き気味に驚いた顔をした。
勉強量自体はみんなと変わんないと思う。
「今日から?」
「うん。パンだし、パッと食べて図書室行ってくる」
「はーい。頑張って」
神楽さんにも声をかけて行きたい、と腰を上げて考え直す。
そんなことわざわざ言われても、と思うかもしれない。
俺1人ぐらい居なくても気にならないかな…。
そう思って教室の前の扉から出た。



図書室には椅子が半数埋まるぐらいには人が居た。
思ったより混んでいる。
多少人が多いのは気にならないが、少し嫌だったのが声をかけられる頻度が高いことだ。
「御堂くん?」
見慣れない顔に思わず首を傾げてしまう。
誰だっけ…?
「あ!帝さん!!」
「あー忘れてたでしょ」
ショートカットが少し伸び、ボブに変わっていた。
大きく丸い目を細め、クスクス笑う。
久しぶりに見た帝さんは少し可愛く見えた。
「女の子ってすごいねー!可愛くなってる!」
感心して言うと、驚いたような表情を見せ、頰を赤くした。
なるほど。陵くんの力か。


別の場所に座るのも変だと思い、隣に座った。
帝さんも勉強しに来たようで、お互い黙ってペンを走らす。


図書室の常連らしい友達数人から、珍しいな、と声をかけられた。
「テストまでの間、お世話になります」
頭を下げておく。
「ゆっくりしたまえ」
「私有地かよ」
そんな話を少しして、すぐにそれぞれの教科書と向き合う。
みんな勉強しに来ているからか、驚くほど静かだった。
図書室には、本をめくる音と、ノートにシャーペンを走らせる音だけが響いていた。

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