神楽さんと御堂研くん

第3章 /御堂研くん

「けんちゃん、どうだった?」
テストが終わると同時に直くんが後ろの席から声をかけてくる。
「まあまあかな」
「俺も」
あの問題がさ〜とテストの話をする。
担任が帰り際にこのまま解散と言っていたので、既に教室を出て行く者も何人かいた。
教室の後ろのドアから覗く女の子が1人。
久しぶりに見た顔だった。
「直くん、あれ…」
神楽さんに声かけた方がいいのかな、と言いかけた。
「おー!やっと来たんだ」
そう嬉しそうに言うと、直くんの声が教室に響いた。
「神楽さん!」
神楽さんは顔を上げる。
直くんは嬉しそうに後ろを指差していた。
不思議そうに後ろを振り返った神楽さんは近藤に気がつくと急に立ち上がり、彼女の元へ走って行く。
何の迷いもなく、近藤に抱き着く神楽さん。
俺の存在が引き剥がしていたのかと思うと少し心苦しかった。
「よかったな」
俺にそう笑いかける直くん。

何の迷いもなく神楽さんの名前を呼んだ直くん。
俺が先に気づいたのに…。

「図書室行かなきゃ」
席を立って鞄を持つ。
「あ、今日も?」
「うん、直くんは帰る?」
「そーだねー…」
「じゃあね」
ひらひらと手を振る。
俺はいつも通り、教室の前の扉から出る。



「けんちゃん!」
廊下に声が響く。
久しぶりに名前を呼ばれた。
振り返ると、近藤と神楽さんがこちらを見ていた。
久しぶり、と言いかけてやめた。
「おはよう」
変な挨拶に近藤が笑った。
「図書室行くの?」
「うん」
「神楽ちゃんは?」
「え?」
なぜ神楽さんじゃなくて、俺に聞くのだろう。
「行く?」
俺は神楽さんに向けて声をかける。
神楽さんは首を横に振った。
「邪魔しちゃ悪いから、いい」
小さな声。
綺麗な透き通る声。
彼女の声も、久しぶりに聞いた気がした。
騒がしい廊下だと聞き逃してしまいそうなぐらい控えめな声だが、俺にはよく聞こえた。
彼女の声だけは聞き分けられる気すらする。
しかし断られた今、なぜ俺に聞いたのか更に不思議になる。
「気が向いたらおいで」
俺はそうとだけ言い、足を進めた。
図書室へ向かった。

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