神楽さんと御堂研くん

第4章 /神楽さん

「 俺、今めっちゃ嫌なやつだよ 」

どういう意味だろう…。
私は一緒にいていいのかな。
靴を履き替える間、黙ってスマホを触っていた。
でもたぶん待ってくれた。

「 気が向いたらおいで 」

あれは私の意思次第で来てもいいよって事じゃなかったのかな…。
すぐ出てきたし、中に御堂陵くんと、涙を浮かべた帝さんいたし…。
え、まさかの修羅場?
一緒にいるうちに、帝さんを好きになっちゃって…とかそういうことなのかな。


あれ?
私、好かれていると思っていたの
勘違いだった?



だとしたら恥ずかしい。
だとしたらこの状況、すごく嫌だ。
だとしたら、フラれたところだよね。
私以外の人を好きで、今さっき告白して、想いを伝えたところだよね?
それなら、嫌だな。
他の人を好きだったなんて、嫌だな…。


思い返せば好きなんて、ひとつも言われたことない。
ただ仲良くなりたいって言われただけだ。

あーそうなんだ。
勘違いなんだ…。
お昼休みもいっぱい話してたのも、別に好きじゃなかったんだ。
ファーストフードで勉強してた時も、別に好きじゃなかったんだ。
一緒に夏休み、遊びたいねって言った時も、全然好きじゃなかったんだ。


お互い黙ったまま歩き、駅に近づく。
少し前を歩く御堂くんがだんだん歪んで見える。

あ、私、泣いてる。

溢れてくる涙が止まらない。

気づかれていない内に止めなければ。
違うことを考えよう。
今日の晩御飯なにかな。
…まだお昼ご飯も食べてない。

「神楽さん、…ええ!?」
振り返って何か話しかけてきた御堂くんは私を見て焦ったように声を上げた。
え、なんで?とかどうしたの?とか言いながら私の目の前で足を止めた。
「大丈夫?何か言った?おれ無視してた?」
私は首を横に振る。

涙は留めなく流れていて、どうしようもない。

御堂くんは手で拭う私の腕を掴んだ。
「手で擦ると赤くなる。俺、何も持ってないんだ、タオルかティッシュ持ってない?」
スクールバッグを肩から下ろし足元に置く。
しゃがみこんで中からフェイスタオルを取り出し、顔を覆うようにあてる。
ついでに顔を隠す。
本当に恥ずかしい。
なんで泣いてるんだろう。
「ええ…どうしたのさ…」
一緒にしゃがんで正面から背中をさすってくれる。

なにそれ、そんなことしちゃダメなんだよ…。
好きじゃないんだから…。

余計顔上げれない。
下校のピークはとうに過ぎていて、誰も通らない。
それだけは良かったと思う。

そんなことを考えていると涙は止まっていた。

御堂くんは私の顔とタオルの間に挟まっている髪をさらさらと取ってくれる。
肌には触れないように指先で器用に引っ掛けている。

どんな顔してるんだろう…。

チラリとタオルから目だけ出す。
すると目が合った。
「あ、悪い。嘘泣きだ」
少し驚いた顔をした後、少し笑ってそう言って、変わらず優しい笑顔を向けてくれた。
「ふふ…」
思わず嬉しくて笑った私に、なんだよーと軽く頭を小突く。
パッと立ち上がり私のスクールバッグも一緒に肩にかける。
「はーい、行きますよー」

無理、立てない。

少しわがままを言いかけてやめた。

なにも言わずとも手を差し伸べてくれる御堂くんがいた。
その手を取って立ち上がる。
よし、と言って離されかけた手を、私は掴んだまま。

「お腹すいた」
そう呟く。

片手でタオルを押さえる。
まだ泣いた顔してる気がする。

御堂くんは子供かよと笑う。

「まあでも、たまにはいいよな。俺らまだ子供だしなー」
独り言のように言うとしっかり手を繋いでくれた。

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