神楽さんと御堂研くん

第5章 /神楽さん

好きだと気付いてから、目で追うようになった。

声をかけられてどう反応していいかわからなくなった。

「困った顔してる」
冷めた声が頭上から聞こえて顔を上げる。
「井口くん!久しぶりだね!」
思わず声が大きくなる。
はっとして見渡せば、直くんとけんちゃんと目が合った。
直くんには目を逸らされ、けんちゃんは小さく笑った。
「けん、元気?」
「え?なんで私に聞くの?」
「けんは元気じゃなくても元気って言うから」
隣の席の椅子を引き、勝手に座る。
「ここで食べるの?」
「まぁねー、さて、誰が来るでしょー?」
ニコニコと楽しそうに私の机にパンを広げる。
私はけんちゃんと直くんの席に目を向ける。
けんちゃんはニコニコとこちらへ向かってくる。

井口くんのこと、めっちゃ好きだな。

ぱっと足を止めると数歩下がって直くんには声をかけている。
指はこちらを指している。

久しぶりに一緒に食べれるかな。

直くんはこちらをぱっと見ると首を横に振る仕草。
けんちゃんが1人こちらへ歩いてきた。

「直くん何も持ってないからいいって」
「だよなー」
「なんで同意?」
わかってたの?
「けん、避けられてんの?」
笑いながらけんちゃんを指差す。
「やめろよ」
呆れた声で井口くんを制する。
けんちゃんは私の正面に座った。
「はいはい、また今度ねー?姫のいないとこでじっくりとー」
「私?」
急に名前を出され、キョトンとする。
正面に座っていたけんちゃんが額に手を当てた。
「え?ほんとに私なの?」
少し焦ってけんちゃんの顔を覗き込む。
「や、違うって」
赤くなった顔で、私と距離を取る。
「ごめん」
近かったかなと思って謝った。
「姫は悪くないよー、けんと直くんが悪い」
「でもめんどくさそうだからって来なくなった隼人も悪いだろ!」
「じゃー近藤も同罪」
なにかよくわからない話をされる。
「ねえ、もう、何がなの?」
「姫は知らなくていいのー」
「うん、気にしなくていいよ」
「じゃあ私の前で話さないでほしい…」

結局その日はテストの話と、夏休みの話をした。

けんちゃんが夏休み中、1回は遊ぼうねって誘ってくれたから、1回と言わず何回でも、と返した。
ついでに、みんなで遊ぼうね、と何度も推した。
すると井口くんは爆笑していた。
なぜ笑うのかわからなかったけど、久しぶりに一緒にお昼ご飯を食べて楽しかった。
また " みんなで " 食べたい。

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