神楽さんと御堂研くん

第6章 /御堂研くん

終礼が終わると、ぞろぞろと帰り支度をし教室を出て行く。
夏休みの課題の量にげんなりしながら重いカバンをさげた。

軽食を取ってからバイトへ向かいたい。

どこで食べようかとふらっと教室を出かけて、ふと気がつく。

あ、神楽さん、残るのかな…。

「けんちゃんバイバイ」
「あ、バイバイ」
教室を出て行こうとするクラスメイトに手を振られ、後ろ手にひらひらと振り返す。

ちょっと今はごめんね、

そうクラスメイトに思いながら俺は神楽さんの席に行く。

「か」
「けんちゃん帰んないの?」
呼びかけた言葉を遮られた。
「あ、あぁ、うん」
しかし遮ったことには気づいていないようだ。
すぐそばで椅子に座っている神楽さんはこちらにちらりと目を向けた。
すぐに戻し、机に向かっている。

「カラオケ行くよー?」
「今日バイト」
俺の言葉に反応したかのように顔を上げた神楽さん。
「そーなの?」
「そー」
「頑張ってー」
「ありがとう」

やっと解放されて神楽さんに目を向けると、にっこり笑って手を振ってきた。

聞いてたかな?

「すぐには行かないんだ」
「ん?」
あ、違うか…普通に帰ると思って手を振ったのか…。

自分に呆れてふうと息を吐くと、神楽さんの前の席の椅子を引いた。
「ここでご飯食べていい?」
「どうぞ」
机に広げていた筆記用具を寄せて机の上を開けてくれた。
広げていた課題は画用紙だった。
「今度は美術なの?」
俺の言葉に不機嫌になる。
「今度はって…いつもみたいに…」
「ふははっ、ごめんごめん」
可愛くて仕方がない。
絵も下手くそなんだ、
「みんな何描いたの?なんでそんな早いの?」
ボソボソと愚痴をこぼす。
彼女の手からシャーペンを取る。

少し、わざとだ。

握られたシャーペンを手から取る時、少し触れた。

「こーゆーのはちゃちゃっと…」
軽く、最近描いた絵を描く。
授業で先生が用意した花だ。
大きな八重咲きの花と小花の花束。
綺麗にラッピングされたそれにはリボンが垂れていた。
その全体像を描くと彼女に渡した。

「花は、嫌い」
「そうなの?」

花が嫌いな女子とかいるんだ…。

なんて、失礼なことを考えてみたり。

「お母さんが毎月、玄関に飾るの」
「へー」
そう簡単なことではないと思う。
すごいな、マメな人なんだろうな。
「でも、けんちゃん上手だね。ぱっと描いちゃって…どんな手してるの」
さっきまでの暗い表情から、明るい表情に変わる。
クスクス笑う彼女に、手を差し出す。
「こんな手」
「そういうこと言ってるんじゃないんだけど」
可笑しそうに笑う姿に満足する。
俺は買ってきたパンをカバンから出して袋をあける。
「絵の具を使うの?」
「うーん、色鉛筆かな、」
「絵の具の方が味でるよ」
「片付けめんどさいじゃん…教室じゃ出来ないし」
「一緒に行こうか?」
美術室。
そう続けようとして肩を叩かれて振りかえった。

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