神楽さんと御堂研くん

第6章 /御堂研くん

コンビニの扉の開閉音に、いらっしゃいませーと間延びした挨拶が返ってくる。

たまに学校で見かける同い年の女の子。
眉毛まで見える前髪を触る仕草。
ふと視線をこちらに向け、あっ、と声をあげた。

「え?早くない?」
「ね、早く着きすぎた」

あの雰囲気に耐えきれず、教室を飛び出してしまった。

「けんちゃん赤くないー?暑いの?大丈夫か?」

思い出して顔が熱くなる。
パタパタとシャツを掴み風を送る。
そもそも今日は暑い。

「谷中ちゃん何時までなのー?」
俺がお菓子を物色する隣で商品を前出しする。
「うわ、これ在庫無くなってんの初めて見た」
「あ、ほんとだ」
「これ美味いよー」
手にした商品を差し出してくる。
うーん、これは買ってあげればいいのか?
疑問を浮かべながら受け取る。
駄菓子の絵が描かれたパッケージの煮卵だ。
女子高生の好む食べ物だろうか?
「なかなかの趣味だね」
「ありがと」
「………」


お会計を済ませて事務所へ移動する。
更衣室や控え室という部屋はほとんどないに等しい。
事務所のデスクにはチーフが座っていた。
「おはようございます」
「おはよー、御堂くん、夏休みどれぐらい入れる?」
椅子を引きながら振り返る。
画面にはシフトの表が映っている。
「…扶養内で」
「さんきゅー」
どれだけ入れられるだろうか、すごく怖い。



バイトに入り、2時間が経った。
お昼時が過ぎ、少し客足が遠のく。
神楽さん、出来たかな…。
「けんちゃん、彼女いんの?」
隣のレジに入っていた谷中ちゃんがお惣菜の廃棄時間を確認しながら捨てる。
勿体ねーな。
「居ないよ」
「一緒だねー」
「そーだねー」
これ、美味しいのかなーなんて言いながらお惣菜を端に寄せる。
「さみしー夏休みになりますなー」
「ねー」
「けんちゃんさー、神楽さんはー?」
「、…」
突然の名前に言葉が詰まる。
ふうと、息を吐いて整える。
「あの子はお友達」
俺の顔をじっと眺め、不思議そうな顔をした。

「けんちゃんがお熱でしょ?」

少し古臭い言い方に笑ってしまった。
「そうだねー…どうやったら付き合える?てか、フラれない?」
「フラれたら悲しいもんねー」
「うん、悲しい。泣いちゃう」
店のチャイムがなり、客が入る。
「「いらっしゃいませー」」
ぼーっとお客さんの行動を眺める。
お菓子コーナーで立ち止まり、商品に手を伸ばす。
その様子を見ながら、会話に戻る。
「まあフラれたら、お菓子1つぐらい奢ってやるよ」
「ありがとう。ゴディバがいいな」
「黙れ」
谷中ちゃんに叩かれた腕をさする。
同い年のバイト仲間だ。
仲良くしたいと思う。

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