神楽さんと御堂研くん

第1章 /有山直

けんちゃんは優しい。
すぎるぐらい優しい。

誰にでも平等に優しいけんちゃんが、自ら声をかけに行った。

え?誰だっけ?

教室を出ていった女の子を見て少し悲しそうな顔をした。
「けんちゃん、一緒に食べよう」
少し遠くにいるけんちゃんに声をかける。
「うん」
振り返った時にはすでに笑顔だった。

「誰だっけ?」
思わず小さく呟いた。
「神楽さん」
「っ!?」
ただの独り言に横から答えられてびっくりした。
側に立っていたのは井口隼人。
けんちゃんとは小学生からの付き合いらしい。
俺の前の席のけんちゃんは、自分の席に座ると、コンビニから出したお弁当を俺の机に置いた。
井口もそこら辺の椅子を持ってきた。

「隼人なんでいるの?」
「遊びに来た」
隣の教室から来たらしい。
「違うクラスなのによく名前わかったな」
「人の名前と顔を覚えるのは得意なんだよ」
羨ましい。
そういうのは苦手だ。
「なんの話?」
「けんの話」
「おれ?」
クスクス笑う。
「なに、怖いんだけど」
「神楽さん、可愛いよなー」
素知らぬ顔で井口が言う。
すると一瞬固まった。
「あー、可愛いよねー」
にこにこしながら同意する。
「気になるの?」
俺がそう聞くと、あははと笑った。
「あー、声かけたから?…そうだねー、ちょっとね」
「へー」
井口はどうでも良さそうだ。
「仲良くなれたらいいね」
けんちゃんのことは好きだから、けんちゃんの恋が実ればいいと思う。
「ありがとう」
にっこり笑った。

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