神楽さんと御堂研くん

第1章 /御堂研くん

「けん、今日はバイト?」
廊下で陵くんとすれ違いざまに声をかけられる。
「ああ!うん!」
「そっか、頑張れ」
「ありがとー」

陵くんは俺を見かけると必ず喋り掛ける。

陵くんにとって俺はなにに見えるのだろうか。
俺は頼りなく見えるのだろうか。

一緒に移動教室から帰っていた直くんは階段の前で待ってくれていた。
少し早歩きで追いかける。

「御堂って、けんちゃんによく声かけるよな、必要以上に」
直くんの言葉に笑った。

「そだねー」
「何も思わないの?」
少し長めの黒髪が黒縁のメガネにかかる。
そこから覗く表情は少し怪訝そうにも見える。

「あー、でも必要以上に女子に声かけられるのは嫌かも」
「なにそれ」
贅沢だなーと笑う。
「でも、そりゃそーだわな。あからさまだしなー」
「うんー」
曖昧に笑っておいた。

「あ、」
小さな聞き覚えのある声が耳に入った。
振り返ると神楽さんが笑顔で別のクラスの子に手を振っていた。
俺は思わず足を止めていた。
神楽さんと喋っていたのは、俺と同じ中学だった近藤さつきだった。
俺の視線に気がついた近藤が声を上げた。
「けんちゃんじゃん!久しぶりー」
「うん」
神楽さんはキョトンとした顔で俺と近藤を見ていた。
「なにしてたの?移動教室?」
「そうー。このクラスなんだ?」
「そうだよー!広いから滅多に会わなかったねー」
「近藤ちっさいもん、見えない」
「あ、ひどい!」
少し喋って、じゃあと手を振った。

その場を離れようとして、少し歩いて足を止める。
勿体無いと思った。
もう一度振り返った。
「神楽さん、」
近藤と神楽さんが何か喋りかけていたのを遮ってしまった。
それでもーー…

「俺とも仲良くして欲しい」

「「…」」

2人とも面食らった顔をしていた。

「あははは!!」
笑いだしたのは近藤だった。
「けんちゃん!そんな顔するんだ!?そんなこと言うんだ!?」
「ええ、なに?結構真面目になんだけど…」
少し恥ずかしくなってしまった。
「ふふ…」
神楽さんも笑っていた。

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