神楽さんと御堂研くん

第1章 /神楽さん

「俺とも仲良くして欲しい」

そう言われてから数週間が経った。

最初はお昼ご飯を2人で食べた。
教室のど真ん中の列、後ろの席で私が黙々と食べる前に座り、にこにこしていた。
スマホを触る私を見て、同じようにスマホを手に、たまに喋る。

それは、クラスでは少し珍しい光景。


次の日はさつきちゃんが来た。
食堂のメニューが気に入らなかったらしい。
売店で買った菓子パンをぶら下げて教室へ入る。
私の隣の席の子に断りを入れ、椅子を借りていた。
前の席には相変わらず、御堂くんが座る。

これも少し、珍しい光景。


そして数日経って、御堂くんの幼馴染という子と、クラスの男の子が混じった。

その時にはもう、いつもの光景になりつつあった。



「神楽ちゃん!一緒に勉強しよ!」
もうすぐ期末テストだ。
今日はお弁当を持って現れたさつきちゃん。
持ち合わせたおにぎりをかじりつく。
「私数学苦手…」
私は手元の彩りの綺麗なお弁当をお箸でつつく。

「俺英語ダメ。他は大丈夫なんだけど」
大きなお弁当を綺麗に食べる有山直くん。
どれぐらい目が悪いのか、眼鏡をかけている。
黒く、ふんわりとした前髪が少し目にかかっている。

「直くんそんな感じだよなー。俺は現代社会がむり」
売店のパンをかじる井口隼人くん。
隣の教室からいつも来ている。
少し軽く見えるが人脈はあるらしい。
このクラスでも誰とでも話している。


「現代社会むりってなんか将来が心配になる」
コンビニ弁当を大きな口を開けて食べる御堂くん。
少し癖のある髪を耳にかけている。
邪魔そうに頭を振る仕草をよく見る。

「けんに心配されんのかよ!俺はお前が勉強だけは出来るの、腑に落ちねー!」
「あ、勉強出来るんだ」
「あ。言ったな、神楽ちゃん」
直くんにつっこまれ、あ、と口を覆う。
「けんちゃん頭いいよー!」
なぜかさつきちゃんドヤ顔をする。
御堂くんは笑っていた。


食べ終わるとそれぞれ好きな行動をとる。
その場で喋ったり、スマホを触ったり、直くんは本を読む。
私は大抵、御堂くんが話しかけてくれるから少し話す。
さつきちゃんはそれを見て、口説いていると言う。
そんな事ないよ、としか言いようがなかった。
「神楽さん、夏休みどこか行くの?」
「んー、予定はないかな、」

それよりテストが…。

「一回ぐらい一緒に遊びたい」
目の前で頬杖をついた御堂くんが首をかしげる。
子犬みたいな表情で、だめ?といったように…。
ふわふわの髪が少し揺れる。
「いいねー!プール行こう!」
隼人くんがそう言うと、御堂くんは嫌そうな顔をした。
「隼人は誘ってない」
「いいじゃん!みんなで行こうぜ、なあ、直くん」
「うん、まあ一回ぐらい遊ぼうよ。プールじゃなくても」
本から顔を上げて頷いている。
直くんプール嫌いじゃん、と笑いながら言う御堂くん。

「けんちゃん」
明るい、活発的な印象の女の子が側に立っていた。
誰だろ…。
「めっちゃ悪いんだけど、今日代わりに入れない?」
「ああ!いいよー!何時?」
机の上に置いていたスマホを触る。
「6時9時なんだけど、」
「わかったー」
スマホから顔を上げるとニッコリ笑った。
「もうほんとごめんね!!お願いします!」
「はーい、大丈夫!」
「ありがとー!」
バイバイと仲よさげに手を振って出ていった。

スマホを触る御堂くん。
「…6時……ん?え、なに!?」
私たちの視線に声を上げる。
「バイトしてるの?」
「あ、うん」
「いいなあ!私もしたい!」
さつきちゃんが食いつく。
「どこでバイトしてるの?」
「コンビニ…」
「俺もそろそろ探そうかなー」
井口くんがスマホを触りながら言う。
直くんはあまり興味がなさそうだ。
私も、バイトはしてみたい。
しかし不安しかない。
「神楽ちゃんは?」
「うーん、お母さんに言わなきゃなって…」
「いいとこ見つかったら教えてね!」
「うん!」

バイトか…。
母の顔を思い浮かべてため息をつきそうになった。
まずは許可を取らなきゃ…。

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