ランピード・フォルス【完】

5章。酷悪な嫉妬 /初めてと終わり




目の前は海なのに不思議と潮の匂いがしない港。

波の音と磯の香りがしない海はただの水面に見えた。


1時間オーバーでやってきた私を京橋君は自然な笑顔で迎えてくれた。


待ち合わせに遅れた1時間。

行こうとする思いと動かない足。
行かないと決めたのに勝手に動く足。

このバランスの悪さが私を遅れさせたけど、向かわせた。


そして、京橋君と向き合ってみたのはいいけれど、どこに焦点を合わせていいのか分からない。

京橋君はしっかりと私を見つめているのに、私は目をクルクル回すように色んな所に視点を置いていた。



「俺、結婚したんだ」


その言葉でようやく私の目線が一点に集中した。
黒く輝く京橋君の瞳の中に。


私は臨機応変に対応できる頭を持ち合わせていない。

結婚するのは分かってたことだし、この場合、冷静に喜ばしく“おめでとう”と祝福するのが普通だと思う。

だけど、何も言えなくなって押し黙ってしまった。


ぎゅっと奥歯を噛めば、感情を持たない相手に対して必要のない嫌悪が込み上げる。


…キライ。
やっぱりキライだよ、京橋君。

会いたいとか、結婚するとか、したとか。
意味が分からないよ。

私の心使って遊びすぎ。
私、いちいち反応しすぎ。




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