御三家の桜姫㊤【完】

一.御三家と生徒会 /(二) 勧誘と条件


 虐めが始まって三週間も経った、五月中旬、中間試験の日。いい加減学校に行く気力を保たせるのも限界に近付いてきた……、と思ったら中間試験が始まるのだから、なんというか、上手く出来ている。

 いつものように(うつむ)きながら下駄箱まで向かったけれど、丁度男子の足が見えたから顔を上げた。私を虐めている男子なら──クラス内でも傍観者を決め込む人と積極的にやってくる人とはいる──少し時間をずらそう。そう思ったけれど、そこにいたのは私を虐める男子じゃなかった。


 というか、全然知らない男子だった。金髪で、左耳に銀色のピアスをして、やや細身で長身で、制服のグレーのジャケット代わりに鮮やかな藍色のパーカーを着てる。花高の校則が建前に過ぎないとはいえ、ここまで校則違反のオンパレードを体現してる人は中々いない。下駄箱にいるから同じクラスではあるはずなのだけれど……、誰だ、この人は。


 ただ、私に何も危害を加えてこないなら問題はない。気を取り直してその人の隣にある下駄箱を開ける。バサバサバサッ、と生ゴミが落ちて来たのをすかさずビニール袋でキャッチ。

 ふふん、と一人で得意な顔をした。これを見越して上履きは持って帰った。今からちょちょっと中を拭いてローファーを入れるだけだ。人目につく日中は何もしないと調べはついている。そしてゴミ袋代わりのビニール袋は常備。完璧だ。


 ただ、労力ではある……。今日も飽きないなぁ、と少しだけ疲れ気味の溜息が出てしまった。


「なぁ、それなに?」

「え?」

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