御三家の桜姫㊤【完】

二.姫か下僕か /(四) 面か仮面か


 週末に文化祭を控えた月曜日。午後の授業が文化祭準備に充てられて準備中。二年四組の出し物は和風喫茶に決まった。母親がお茶の先生だとか免許だけ持ってるとか何年も習ってるとか、そんな子が何人かいるからその子達がお茶をたててくれる。

 私は全力で庶民だしお茶なんて作法も分からないし、赤色のテーブルクロスをチクチク縫っている。ちなみに、八橋さんと一緒に。

 そう、桐椰くんが泣かせたあの八橋さんだ。舞浜さん達は三人仲良くデザイン案に沿ったメニューを描いてる。桐椰くんと付き合ってることになって以来、あの三人の視線は冷たい。私何も悪くないのに……と八橋さんの隣で気まずい沈黙を抱えながら密かに心で泣く。


「だからそっち持てって言ってんだろ!」

「はぁ? やだね、自分でやれよ。なんでお前に協力しなきゃなんねーんだよ!」

「誰かが支えないとできねぇのが分かんねぇのか? 分かったらさっさと持て」

「お前に指図されるのが気に食わねぇんだよ!」


 桐椰くんは赤井くんと口論しながら教室の一角で看板作りをしている。いっそのことあれほど仲が悪いほうが空気が重くなくていい。

 何を考えながら私と一緒に作業しているのか分からない八橋さんに僅かに視線を向けてみるけれど、その表情は髪に隠れて見えない。黙々と、ただしゆっくりと作業を進めていく手元まで含めると本当に話しかけちゃいけないのかと思ってしまう。


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