御三家の桜姫㊤【完】

一.御三家と生徒会 /(一) 権力と暴力

 事の発端は、友達の梅宮(うめみや)有希恵(ゆきえ)が廊下で肩をぶつけられたことだった。


 相手からぶつかってきたことは誰の目にも明らかで、よろけた有希恵の鞄は廊下に落ち、その中身が派手に散らばった。有希恵は屈んで、慌てて中身を掻き集めていた。拍子に、おさげにしていた黒い髪が眼鏡の横を掠めた。そんな様子に構いもせず、有希恵にぶつかった男子達は笑いながら立ち去ろうとしていた。謝罪なんて勿論なく、それどころかまるで何事もなかったかのように。


「ちょっと」


 そんなの、むっとするのは当たり前で、その男子達の腕を掴んで呼び止めた。彼等は、派手に制服を着崩して、ブランドもののピアスなりネックレスなりで自身を飾っていて、傷みきった明るい色の髪を揺らし、私よりもむっとして振り向いた。


「なんだよ」

「ちょっと亜季ちゃん、いいから、」

「有希恵に謝ってよ」

「はぁ? 何で? 勝手にカバン落としたヤツに何を謝らないといけないの?」


 その時どうしてか、私達の周りにいる生徒はみんな笑っていた。「何、アイツ」「転校生なんだってさ」「あぁ、どうりで」と、クスクス笑いながらよく意味の分からない遣り取りをしていた。何がそんなに可笑しいというのだろう。


 一体、何が。

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