御三家の幕引㊤【完】

十一、その秘密の理由を教えて /(一)背徳の原動力

 クリスマスの次の日、玄関のチャイムが鳴った気がして、むくりとベッドで起き上がった。気のせいかな……と暫く待っていると、再度鳴る。気のせいではないようだし、どうやら居留守を使っても無駄なようだ。

 仕方なくベッドから降りようとすると、足に力が入らず、視界も一瞬真っ白になって、身の危険を感じて再びベッドに倒れ込んだ。明滅(めいめつ)する視界はゆっくりと明瞭(めいりょう)になってきて、そこから(ようや)く立ち上がる。


 そんなことをしていたせいか、パーカーを羽織ってスマホ片手に階段をのろのろと降りているうちにまたチャイムが鳴ったので、「はいはい」と呟くような返事をしながら玄関に向かった。誰もいない上にカーテンも引いているとなれば昼間でも薄暗いので電気もつける。


「誰……」


 半分寝ぼけた頭のままゆっくりと扉を開けると、桐椰くんが立っていた。その意味がよく理解できずに、ぼーっとその姿を眺める。歩いてきたのか、鼻の頭が少し赤かった。その手には、お見舞いにしては妙に家庭感(ただよ)うビニール袋が握られていた。


「……えーっと」

「お邪魔します」


 上手く対応できない私を押しのけるようにして、桐椰くんは玄関内に入ってきた。混乱したまま、入ってくるがままにそれを受け入れ、「キッチンどこ」「突き当り」なんて遣り取りをした。私が許すまでもなく、桐椰くんは我が物顔で冷蔵庫を開けたり片手鍋を取り出し、それをダイニングテーブルについて眺める。

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