御三家の幕引㊤【完】

十、その関係に名前をつけて /(一)彼氏と彼女の密談



明貴人(あきと)くん、お昼食べるよー」


 名前を呼びながら生徒会室の扉を開けると、机についている鹿島くんが顔を上げた。いつものことだからか、その表情はどこか呆れて見える。


「教室で待ってろって言ってるだろ」

「待つのに慣れてないもので」

「慣れろよ」

「大体、昼休みが始まった途端に教室から消えてるの不思議なんだよねー。そんなに生徒会長の仕事って忙しい?」


 ひょいひょいと生徒会室内に入り、生徒会長の机に我が物顔で腰掛ける。パリッと菓子パンの袋を開ければ「机が汚れる」と文句を言われた。無視してお茶のペットボトルを置けば、鹿島くんがペンを置いた。


「君は、意地でも教室で俺と食べようとしないな」

「不本意すぎる痛い視線を食らい続けたくないもん」

「そうならないように身形(みなり)をマシにしたんだろ? ま、それでも前と大差ないか」


 鹿島くんの指示で、メガネはやめてコンタクトにする羽目になった。前髪も整えろと言われて毎朝巻いているしハーフアップにもした。お化粧だってかなり薄くだけどした。全ては“隣に並ぶ彼女の見た目が悪いのは俺の評価にも影響する”なんて我儘な鹿島くんのご要望だ。お陰で朝の準備が増えて面倒くさい。


 挙句、そこまでしているのに変貌(へんぼう)マジックは初日くらいしか起こらず、一週間経った今は「結局桜坂さんって普通なんだよね」なんて言われてしまっている。最近学んだのは「化粧映えする」は半分悪口だということだ。

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