無自覚な誘惑。【完】

《第4章》不器用な恋たち。 /ズルい人。


【side 和泉】




『……また、おかゆ……持ってきてください』



人に頼みごとをしたのなんて、久しぶりだった。

誰かに何かを求めることが、どれだけ無意味なことかわかってから……望むことすら諦めていた。

それを、久しぶりにこの人に……静香先輩に願った。



『はいっ……明日も作りますね……!おやすみ、なさい……』



そう、言ったのに……——










合宿2日目。


昨日よりはマシになったと思うけど、相変わらず高熱が出て立ち上がるのでさえ難しかった。


体、怠い……ていうか痛い。

熱が出るなんて本当に久しぶりだから、弱ったな……。


でも昨日、あの人が来てくれて、看病をしてくれて……

久しぶりに、人の温もりに触れた気がした。


おかゆ……初めて食べたけど、美味かったな……。

今日はいつ、来てくれるんだろう。


あれだけ毛嫌いしていた人を、待ち望んでいる自分がいた。


0
  • しおりをはさむ
  • 7230
  • 37344
/ 518ページ
このページを編集する