不眠症の上司と―― 千夜一夜の物語

作者菱沼あゆ

「俺が寝るまで話し続けろ。
 先に寝たら、どうなるのかわかってるんだろうな」

「ええ〜?」

「俺が寝るまで話し続けろ。

 先に寝たら、どうなるのかわかってるんだろうな」


「ええ〜?」




 ひょんなことから、不眠症の上司、辰巳遥人(たつみ はると)を毎晩、膝枕して寝かしつけることになった和泉那智(いずみ なち)。


 職場では、鬼のように恐ろしい遥人に膝枕なんて、恐怖でしかない、と思っていた。


「え〜、では、私のしょうもないお話を――」


「お前にしょうもない話以外のものがあるのか」


 あのー、専務が寝る前に私が恐怖でショック死します。


 しかも、この人、社長のお嬢さんの婚約者なんですけど!?