不眠症の上司と―― 千夜一夜の物語

浮気相手のちょっとした秘密




 戸締りをし、一度外に出たあとで、桜田は、オートロックのはずの鍵をもう一度確認していた。

「ご苦労だね、桜田さん」

 そんな台詞が聞こえて、振り向く。

 高校生というには、ちょっと幼い風貌の綺麗な顔をした少年が立っていた。

「洋人っ」

「那智たちは仕事に行った?」
と腰に手をやり、鷹揚に訊いてくる洋人に言う。

「……お前の顔だけは見たくなかったな」
と。

「僕もあんたには会いたくなかったんだけど、仕方ないじゃない。
 ねえ、辰巳遥人って何者なの?」

 桜田は黙っている。

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