不眠症の上司と―― 千夜一夜の物語

遥人の結婚式  〜千夜一夜の物語〜





 長いようで、短かったな。

 そんなことを思いながら、那智は会社の廊下から窓の外を見た。

 入社してからずっと見てきた風景だが、呑気に鼻歌など歌いながら、此処を通って、お昼なに食べようかななんて思いながら、外を眺めていた日々が今は遠い。

 私、すべてが終わったあとで、今まで通りに暮らせるのだろうかな、と思う。

 そういえば、桜田さんがあんなところで梨花さんとキスしてたせいで、こんなことになったんだった。

 おのれ、桜田。

 だが、では、遥人との関係が、こんな風にならないままでよかったかと言うと、そうは思わない。

 最初っから、実るはずのない恋だったが、知らない方がよかったなんて、やっぱり思えない。

 そんなことを考えていると、誰かが階段の方から手招きしていた。

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