素顔のまるⅡ

身も心も一つになって

夜遅くケータイに陣からのメールが届いた。

「帰るのが延びた。また連絡します」
短い文章は、陣の余裕のなさのようで、円里の思いは悪いほうへ悪いほうへと落ち込んでいった。

顔色の悪い円里を心配してタクシーで行くように進める空の厳しい顔つきに、ようやく円里のほうが折れた。

しっかりしなくちゃ。私に何かあったら空が哀しむ。

円里は自分の頬を引っぱたいた。

けれどタクシーのなかでも想像は悪いほうへ悪いほうへとはまり込んでいく。
陣に何かあった? カゲ? 病気? 事故? 息がつまりそうになって慌てて深呼吸を繰り返した。

小刻みに震えそうになる手をあわせて胸元に祈るようにおしつけた。

それでも気丈に実験データを解析していった。悪い想像を断ち切るように日頃を上回る速さで物事がこなされいくのに、周りのスタッフが目を見張った。

いつもなら時々、気軽な話をし笑いあうのだが、これはもう話しかけられる状況ではない。円里のポテンシャルの高さを思い知らされると同時に、これがいつまで続くのか心配そうな目が円里に時折そそがれているのにもまったく気づかずに実験を続けていた。

それでも夕刻には一度タクシーで戻り空と夕食を共にする。

空にも届いていた陣からのメールも1行ほどのもので、余裕のなさがうかがえるから今の円里のことを相談できなかった。

とめても職場にもどることがわかっているから空はあえてとめなかった。

陣が早く帰ってきてくれることを願うしかできない自分が悔しかった。

アクセルを振り切ったまま仕事をしている状態になっている円里を、最初は見守るだかだった同僚がさすがに心配になって声をかけた。
「マル、無理しすぎ少し休憩しろ」
上司命令だといわんばかりの態度に、円里は従った。空を見上げる。
唇が震えそうになりきつくかみ締めた。

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