素顔のまるⅡ

円里の渡米

1回忌が終わった。

空は小学生になっていた。

哲が企画した学部の枠を超えたゼミは、
陣が理学部の学位を獲ったことで事がよりスムーズに運び、どこの部にも属さない学長直轄のゼミになった。
そしてそのゼミを取り仕切るのが、陣彗だ。
参加を表明したメンバーの名前だけ見ても、世界的に注目されている精鋭の集まりだった。あらゆる方向から焦点をあてた質問にも的確に対処できる自信がなくてはゼミの議論には参加できない。

ゼミの最年少は佐竹円里28歳。
トップに陣彗41歳。
学部生もネットを通して聴講できるし、ネット上で自由に討論できた。

司会進行も円里が務めた。

今や世界中の研究者が注目するゼミに、各国の研究者もコメントを残していく。

日本語で始まったゼミが、
半年を経ずに英語に切り替わった。

命日の日、
ゼミが終わった部屋で、
まだ誰一人席を立っていないなか、
陣が突然、佐竹哲の話をしはじめた。

1年前……このゼミの発起人である佐竹哲がアメリカで事故に逢い急死しました。

哲の働きがなければ、
今このゼミはなかったし、
難病治療の未来は暗かったでしょう。

医学界のみならず理学生物学分野の研究者が総力をあげて取り組んでいる今、
彼が掲げた「円里が難病を治す志を遂げさせる」という志は、希望の光を灯し続けています。

今日が彼の1回忌であることは、
俺にとっては偶然ではありません。
俺もこの日に、一つの目標を皆さんの前で掲げさせていただきます。
陣彗は、円里が難病を治すという志をかなえさせるということのために研究に打ち込んだ哲の志のすべてを一生をかけて背負うことをここに宣言します。
まあ、マルちゃんが認めてくれないと、哲のすべてを背負うことはできないんですけど。

佐竹円里さん、そして……佐竹空さん。
俺が哲の志を背負うことを認めてくれませんか?

「俺は陣ちゃんがこのゼミを引き受けたときからとっくにそのつもりだけど? ママだってそうだろ?」

「陣さん……ありがとう」

司会進行係として文句も言わず雑用をこなしながら、誰よりもクールなコメントをする若い研究者に、
最初は偏見をもっていた連中も、
すぐにその認識を改めた。

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