彼がネクタイを緩めたら1st㊤【完】

溺れるものは藁をもつかむ


久しぶりにノアのドアを開けて、


「こんにちは」


と声を掛ける。



カウンターの中で丁寧にカップを拭いていたマスターの烈さんは、

「あ」

と目を丸くしてカップを仕舞い、私を手招きした。




「どうしたの、こんな時間に。今日休み?」



烈さんが不思議に思うのも無理はない。


まだ、午後五時だし。



「いや、そうじゃなくて……ちょっと職場でミスしてしまって……日菜子さんが、終わったら飲みに行こうって、それでここで閉店まで待たせてもらおうかなって。いいですか?」




なんだか変にしどろもどろになってしまった。


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