俺様とネコ女Ⅲ SS追加

【番外編】before sunrise





「赤澤さん、戻ってくるんだってね。聞いた?」


ベッドに腰かけて煙草を吸っていると、竹内 菫(たけうち すみれ)が後ろから抱きついてきた。

甘えるようにおぶさるから、素肌の上を、菫の髪の毛が流れる。


まだ、ふたりとも、裸だ。



「朝陽(あさひ)は赤澤さんのこと知らないか。赤澤さんが東京本社行った後の入社だもんね」



赤澤。赤澤。赤澤。


今日一日で、何度この名前を耳にしたか。



会ったことはないが、知らないわけがない。

うちの会社の人間なら、入社1年目の新人だろうと、定年後の延長雇用の年配者だろうと、知らないやつはいない。



赤澤 航という男。

入社以来、数々の最年少記録を打ち立てた。


品行方正、成績優秀。

社史に残るほどの、大きな契約を獲得し、満を持して本社に異動。

競合相手の多い本社でも、文句なしの結果を残し、慣例より何年も短縮で支社に戻ってくる。それも、最速で課長に昇進してだ。



そして。

かなりの男前で、好意を寄せていた女は数知れずだという。

だが、当の本人は、社内恋愛はしないと豪語していた。


にもかかわらず、入社間もない秘書課の新人と、転勤を機に、結婚した。


その件に関しては、実は二人は何年も交際していたとか、スピードでき婚だとか、さまざまな噂と憶測が飛び交い、真相は闇の中らしいが、その相手もまた、かなりの美人だと言うから、嫌味な男だ。


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