世界はほんの少しの闇と溢れるばかりの愛で満ちている【完】

chapter one /Ⅵ どうにもならない








……綺麗な人、だったなあ。



休み時間。



昨日、綾乃ちゃんにラクーアのおみやげにもらった、ムーミンのキーチェーンをながめながら、思いをめぐらせていた。



やっぱり、保科くんのことが好きなんだって、認識して。



バンドの件で、保科くんとのつながりが感じられたのは、うれしかったものの。



思いがけず、保科くんの好きな人を知ってしまったことで。



もともとわかっていた自分との距離を、さらに思い知らされたというか……。



「…………」



教室の時計を見上げると、次の授業が始まる5分前。



たしか、次は物理室への移動。



教科書やノートを準備して、一人で教室を出ると。



「そういえば、昨日の打ち上げのとき。結城が帰ったあと、海老名さんがさ」



廊下で、保科くんと結城くんが話していた。



どうしても、会話が耳に入ってきてしまう。

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