世界はほんの少しの闇と溢れるばかりの愛で満ちている【完】

chapter two /Ⅰ あなたがいれば










「これも運んじゃって、大丈夫?」



結城くんたちの練習終了後。



めずらしく、部誌の課題を時間内に提出できた、わたしも片付けを手伝っていた。



「や、それは重いから、俺が運ぶよ。できたら、この小さい方のタムを、えーと……」



「瞳子」



わたしを見て、名前を思い出そうとしていた、軽音部のドラムの男の子に、結城くんが答える。



「あ、そうそう、瞳子ちゃんだった」



そんなさりげない、短いやり取りを横で聞いているだけでも、ふわふわした気持ちになる。



「うん。じゃあ、これ、機材庫に入れてきます」



多分赤くなっている顔を隠すように、ドラムのタムと呼ばれる部分を抱き上げたとき。



「何?おまえ、瞳子ちゃんのこと、知らなかったの?有名じゃん」



「あ?」



今度は、ベースの男の子の言葉に、結城くんが微妙な反応を示した。

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