世界はほんの少しの闇と溢れるばかりの愛で満ちている【完】

chapter three /Ⅴ 見えなかったもの







「海老名さん、寂しがってたよ。最近、結城が顔出さなくなったから。あと、日菜さんも」



休み時間。



結城が忘れた教科書を借りに、うちの教室の前まで来たとき、そう伝えると。



「ああ……そっか」



バツが悪そうに、言葉を濁す結城。



まあ、理由はわかりきってるんだけど。



「今度、下北沢の初めてのライブハウスでやるから、そのときにでも来れば?」



「そう、だな」



多分、結城の中で野呂さんと結びついている、イロイッカイズツ。



でも、南池袋のあの店じゃなければ、まだ……。



と。



「緑くん、教科書借りれた?」



明るい笑顔で、綾乃ちゃんが近づいてくる。

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