世界はほんの少しの闇と溢れるばかりの愛で満ちている【完】

chapter three /XII 鼓動








「やー、ライブだね、ライブ」



ライブ前日、スタジオでの練習を終えて。



ギターを片付けながら、うれしそうにはしゃぐ、小野。



「何だかんだ、ひさしぶりだよね。楽しみ。あ、結城の彼女、関口さんだっけ?今回も来るの?」



「…………」



何気ない辻の質問に、しばらくの間。



「あれ……?もしかして、まずいこと聞いちゃった?」



人のいい辻が、結城の顔色をうかがって、焦りの表情を浮かべる。



俺も黙ったまま、結城の答えを待った。



……聞かなくても、わかってはいるけど。



「来ないよ」



いつものように、無愛想に応えたあと。



「二度と」



さらりと、そう一言つけ加えた結城に。



「えっ?もしかして、別れちゃったの?」



「ひど!あの子、結城のこと、あんなに好きそうだったのに」



俺も辻たちと一緒に反応しないと、不自然だ。

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