世界はほんの少しの闇と溢れるばかりの愛で満ちている【完】

chapter four /Ⅸ 痛み、そして……








「瞳子」



「結城くん……」



日菜さんのマンションまで、あと数十メートルというところだった。



突然、保科くんから手を離された瞬間、結城くんのわたしを呼ぶ声。



「ごめん、結城くん……電話、くれてた?」



おばさんや日菜さん、いろいろな人に何度もかけているうち、充電が切れたままになっていたんだっけ。



「バイトの振替頼まれて、休みになったから、瞳子の店に行ってみたら……海老名さんがいて、びっくりした。電話、綾乃だったんだろ?」



「そう……綾乃ちゃん」



怒ってるのか、怖いくらいに淡々とした口調の結城くん。



「ごめんなさい。心配かけたよね」



待ってくれていた結城くんには、時間が何倍にも感じられたはず。

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