虚上の迷宮

6章 迷いの森で人は消えゆく

すぅ、と白い砂漠が森へと変わる。

それはこれまでこの迷宮で何度も見たのと同じ調子だった。

突然、何の前触れもなく、森が現れるのだ。

白い砂は土色の、豊かな土壌へ。

見渡す限り白砂以外に何もなかった空間は、突然たくさんの木に覆い尽くされた。

木々の隙間から見える空はまだ明るい様なのに、森の中は不気味に薄暗い。

まるで魔女や幽霊でもさまよっていそうな、そんな森だった。

ヒュゥ、とハリソンが口笛一つ吹く。

「こいつはまたえらく不気味な場所に出たな。
うっかりすると道に迷いそうな森じゃねぇか」

内容とは裏腹に、いつも通りの至って明るい口調でもってハリソンが言う。

それに──という訳では決してなかったが、口を開いたのはセディンだ。

「……ねぇ、あれ……」

と、人差し指で一本の木の幹を指差す。

シフォルスティンもハリソンも、その言わん度する事はすぐに分かった。

その木の幹の、ちょうどセディンの頭ほどの高さの所に、ある一枚の白い封筒が留められていたのだ。

ハリソンが木に近づいて ピッ、と封筒を幹から剥がす。

恐らくは簡単な粘着質の物で留められていたのだろう。

あっさりと剥がれたその封筒を、ハリソンはさっと裏返してみる。

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