虚上の迷宮

3章 こちらには強盗


セディンはどんどんと、怒り足で一人、街道を歩いていた。

「~せっかくおいしく食べてたのに…シフォンのせいでめちゃくちゃだ。
確かに食べれたのはシフォンのおかげだったけど…でも、こんなの横暴だ」

言いながらも、足を動かす。

実をいえば靴屋の在り処なんて知らない。

おそらくこの迷宮にそんなものは存在すらしないだろう。

シフォルスティンはここへ来たばかりだから、何も知らないのだ。

迷宮内で人と人が出会うなんてことは、ひどく稀(まれ)。

ましてや一度離れてしまえば、また再び出会える確率なんてほとんどゼロに等しい。

だから「行ってくる」ではなく「さようなら」を言った。

おそらく、シフォルスティンがいつまで待っていてもセディンはあそこには戻ってこれない。

「──…少し、悪いことしたかな…?」

ちょっとだけ後ろを振り返って、思う。

シフォルスティンやハリソンの姿はもう見えなくなっていた。

砂漠で助けてもらったかというと、そうでもなかった気がするが、タルトにありつけたのも、シフォルスティンの分をもらったのも事実だ。

──…もう遅いけど。

思い、そっと視線を前へ戻す──…と。

「!」

降ってわいた様に、目の前に小さな店が現れた。

ドアの上には古びた看板が掲げられている。

『──── 靴屋 ─────』

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