アスタルの野望

1章 アスタルの野望

アスタルは「う~ん!」と思いきりよく両手を伸ばして、風を感じた。

輝くような青空に、すっきりと気持ちいい空気。

身につけたばかりの庶民の木綿服がさらさらと音を立てる。


「なんて気持ちのいい風でしょう!
いい予感がしますわ!」


爽やかで明るい声で、アスタルが言う。

それに、

「一国の姫君ともあろうお方が、こんなところで手を広げて…」

と、激しく暗い顔で嘆いたのは、こちらも庶民の服をまとった娘だった。

年はアスタルより5つ上の22才。

すらりと背の高い美人だったが、その腰には長剣がかかっており、佇まいからも相当の剣の使い手と見てとれる。

金色の長い髪をポニーテールにした、可愛らしいといった風貌のアスタルとは対照に、黒髪をショートカットにした、くっきりとした美人だった。

元は姫の護衛役として勤めていた女剣士だ。

その女剣士の嘆きに笑って、アスタルは言う。


「そう固いことを言わないでくださいな。
それに今の私はもう姫君ではないのだし。

ああ、そうそう。
しゃべり方もちゃんと変えなければなりませんわね。
エスメラルダ、私の言葉遣いの先生になっていただけません?」

軽やかな調子でアスタルがいうのに、女剣士エスメラルダが「はぁ~っ」と深く息をついて首を振る。

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