文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

黒崎 誠 /side MITAKA

―――……




「んぅ、んー…」


「……」



腕の中で、すやすやと。

無防備な顔で、寝息を立てながら眠る愛しい存在を俺は見つめていた。


男前と言われる目鼻立ちの整った容姿に、女にしては高い身長。

そこにコイツの性格や、言葉使い。

喧嘩の強さが加われば、殆どの奴らがマコを男だと間違える。


…スカートなんて着ないしな、コイツ。


でもやっぱりアイツの娘だ。

アイツの性格をそっくり受け継いでやがる。





『何やってんのよミタカ、ほら行くわよ!』




アイツが…直子が死んだなんて、信じたくなかった。

マコ坊から知らせの電話を受け取った時も、にわかには信じられなかった。


だが今日、まだ出来て間もない小さな墓の前に立って。

そこに供えられた花や線香の匂い、そして冷たい冬の風を感じて。


そして久しぶりにマコに会って、その涙を目の当たりにして。

ようやくそれが、現実なんだって事を悟った。



ああ。

ホントにアイツはもう、逝っちまったんだなって…。





『ミタカ、もし…もしあたしに何かあったらさ。

お願い、マコの事――……』




ああ、分かってる。

大丈夫だ、安心しろ。


お前の娘を、俺達の宝もんを。

愛した女の忘れ形見を、絶対独りには…しねぇからよ。



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