文庫版鈴蘭学園物語~special episode~






俺はこの時の桐原との会話を、全く気にも止めずすぐに忘却の彼方へと追いやってしまった。

更にはこの数日後にも機会があったにもかかわらず、俺はその『事実』に気付く事はできなかった。


…クロがのんきなら、俺は間抜けだな。

そんな間抜けな俺が自分の間違いに気付くのは、一週間以上も後の話――…。







「おっおま、お前…!」



夜の野原、背後には咲き誇る一本桜。


目の前には、どこか気まずげな顔でこちらを振り返る後輩の姿。


そして手の平に感じた…柔らかな感触。



そうやって自らの手で体感して、初めて俺はその『事実』を認識する事ができたのだった。








「――お、女あああ!?」








…そんな素っ頓狂な叫び声を上げたこの時の俺の心情は、あえてもうこの場では語らねぇでおきてぇと思う。






文庫『鈴蘭学園物語①』へ続く…

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