文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

一色 冬樹 /入学式での出会い





ここ鈴蘭学園には、色んな種類の『家』の人間が集まってくる。

華族の流れを汲む財閥や大企業の代表や役員、高級官僚や政治家の子供達。


その中でも、俺の一族は特殊。

昔から代々、他の人にはない『特異な能力』を受け継いでいたんだ。


だから俺には一目見て、分かったんだ――…。






トキ side




(やっぱり、来なきゃよかった…)



入学式会場、たくさんの鈴蘭生が同じ一つの空間に集まっていた。

人混みは苦手で、俺は他の人達から離れた後ろの方の席に座ってた。


できる事ならサボりたかったけど、新入生代表挨拶をしなくちゃいけなかったから。


名前が呼ばれるまで、目を閉じてやり過ごそうって思って。

けど少しして、ふと近くで空気の流れを感じたんだ。




(……あ、)



目を開けたら、会場に人が入って来るとこで。

その子は、俺と同じ鈴蘭男子学生の制服を着てて。


一目見て、気になった。

だってその子は、入学式会場に集まる他の誰とも違う空気を纏っていたから…。




「俺ね~一色冬樹ってぇの、よろしく~。」



いつもなら、自分からこんな風に話しかけるなんて事はしなかった。

それなりの人付き合いはあったけど、馴れ馴れしい触れ合いは苦手だったから。


けどその子の周りの空気は、すごくきれいで。

とっても、いい匂いがしたんだ。




「俺の名前は…」


「黒崎くんでしょ~、知ってるよぉ。」



そしてその子の容姿を近くで見て初めて気付いたのは、今鈴蘭生の間で話題になってる【鈴蘭】初の奨学生本人だって事。

『外』から来たから…生粋の鈴蘭生じゃないから、他の人とは違って見えるのかなって思ったけど。


それだけじゃなくて、何て言うか。

キラキラ、キラキラって。

俺の眼を惹き付けて、止まなかった。




「ちょ、近ぇよ。離れろ。」


「や〜。」



思いきって抱き付いてみたら、いい匂いがますます強くなって。

最初その子は…マコっちゃんは、俺の事を押し退けようってしてたけど。

俺が離れないって分かると、仕方なさそうにため息を吐いた。


イイ子だな、優しい子だな。



ああ、きっと。


――俺はこの子を、欲しくなる。

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