文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

黒崎 誠 /三鷹さん





振り返るよりも先に、

俺の耳に響いたのは。


物心付いた頃から聞き馴染んだ、

ハスキーな声。




「ようマコ坊、久しぶりだな。」


「っ…!」



そう言って店に入って来たのは、艶やかな黒髪を緩くオールバックにした長身の人物。


かけられたその声に、入り口に佇むその姿に、俺は目を見開いた。

それは、俺がとてもよく知っている男の人だったから。


年の頃、三十代前半。

凛々しい眉に整った顔立ち。


見るからに高級なスーツに身を包み、ワイルドな笑みを浮かべ『BAR Noah』にやって来たその人物。




名前は



三鷹 義嗣(ミタカ ヨシツグ)、



母さんの同級生で無二の親友。


小さい頃から俺の事をよく構ってくれてた、俺の…父さんみたいな人だった。




「三鷹さんっ!」


「っ、おいおい。熱烈な歓迎は嬉しいが、無闇に他人に抱き付くなっていつも言ってんだろ。」



三鷹さんの姿に目を輝かせた俺は笑顔で走り寄り、その胸に飛び込んだ。

そのままギューッと抱き付く俺に苦笑を浮かべながらも、しっかりと抱きとめてくれる三鷹さんにますます笑顔になる。


三鷹さんっ、三鷹さんっ。

本物だ、本当に三鷹さんだっ。


こうして会うのいつ以来だろう。

電話ではちょくちょく話してたけど、直に会うのは久しぶりで嬉しさが込み上げてくる。




「三鷹さんは他人じゃないもーん。」


「ったく。」



やれやれといった感じで息を吐きながらも、その顔は俺同様ちょう笑顔。

俺の身長は170ちょいだけど、三鷹さんは185以上の長身で抱き付くと俺の身体はすっぽり三鷹さんの腕の中。


三鷹さんに抱き締められると昔から安心するんだよね俺。

やっぱ父性感じんのかなー。

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