文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

三鷹 隆義 /新歓前夜の生徒会室





内側に潜む餓えた獣が、渇望する。

鮮血滴る、獲物の肉を。


早く、早く食わせろと――…。






隆義 side




「…チッ、ダメか。」


「……」



新入生歓迎会、前夜。

校舎、赤の塔最上階の生徒会室にて。


ソファーに寝転びスマホをいじっていた俺は、聞こえてきた舌打ちの発生源へと目を向けた。

そこには苛立たしげな様子でパソコンの画面を見つめる、幼馴染みの姿が…




「ククク、【鈴蘭】の王子様が舌打ちたぁ学園の連中が聞いたら耳を疑うだろうなぁ。」


「他の奴等の前で俺がそんなヘマするかよ。」



クツクツと笑う俺に向かって、お優しい副会長っつー仮面を外した男がハッと鼻で笑って応える。


明日の新歓に備え、他の役員はすでに帰してしまっていた。

二人きりの生徒会室、自然と会話もフランクなものになる。




「お前でも無理か、聡一郎。」


「ああ、ついこの間までは割と簡単に入り込めたんだが…今や『桐原』も真っ青なセキュリティーだ。」



他の奴等がいる前じゃ『家』の主従関係を示す為に名字で呼び合っているが、お互いしかいねぇ場じゃあ名前で呼び合うのがいつもの事だった。


その聡一郎が調べているのは、今年入ったっつー外部生の個人情報。

名前は…何だったか、忘れちまったが。


この生徒会室から理事長室のメーンコンピューターへのハッキングを試みてるが、上手くいかねぇらしい。

遠隔で無理なら、理事長室に忍び込みでもして直接コンピューターにアクセスするのが有効な手段だ。


その方法は聡一郎の頭にもあったようで、少し思案した後おもむろに口を開いた。




「…確か明日、理事長に来客の予定が入っていたはずだ。

その見送りに理事長室を空けるだろうから、隙を狙って行ってみるかな。」


「おーおー、思い立ったが吉日ってか。」


「お前じゃないんだ、そんな思い付きで動くかよ。」



呆れたように息をつきながら、聡一郎はパソコンの電源を落とした。

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